仏壇彫刻

お仏壇にはいろいろな彫刻が施されています。花鳥であったり中国の故事に基づく物、山水などさまざまです。

好きな彫刻はいくつかあるのですが、中でも気になるのが主に県北からのお仏壇によく使われている、植物の「ソテツ(蘇鉄)」の彫刻です。まるでパイナップルのように見えます。名前を聞いてもピンと来ないかもしれませんが、ヤシの木と共に南国情緒溢れる感じの植物です。植栽すれば寒さにもまあまあ適応してくれるらしいですが、自生の北限は宮崎県だそうです。

そんな南国の植物がなぜ新潟県のそれも県北地域のお仏壇の彫刻の題材に使われているのでしょうか?

なんでもすぐにネットの海から情報を得られる現代と違い、昔は身の回りにある物、歩いて行ける所が全てだったのではないかと思います。

県北には北前船の寄港地だった岩船港もあります。遠く離れた場所からもたらされる南国の様子に、雪深い新潟の人は憧れや珍しさとともに、彫刻にしたのではないかと考えています。

県北地域の特徴で、大半を黒(もしくは溜色)と赤に彩られたお仏壇の数少ない彫刻の中でも、大袈裟なほどにデフォルメされた金箔押しのソテツの彫刻は存在感を放っています。

たくみ工房